かまどさんへの道

うちではご飯を「かまどさん」で炊いています。伊賀焼の土鍋です。とても簡単においしく炊けるので、個人的に買ってよかった製品のベスト3に入ります。
ほんと、うまいご飯を食べられる、うまいご飯が家で炊けるというのはとても大事なことだとしみじみ思います。食うために生きているだとか、生き物は消化管に過ぎないとか、腸は脳であるとかを実感できます。

大学生くらいまでは、ご飯が特においしいと思ったことはありませんでした。ふつうに食べて、むしろ不味い米をなぜこんなにまずいのかと気にしながら食べていたくらいの米事情です。学食やそのへんの飯屋の安い米は蝋みたいだったりしましたし、変な臭いがしていたり、ダマになってたりというのは日常でした。たぶん水もあまりよくはなかったんだろうと思います。

きっかけはよく覚えてないのですが、たぶんどこかのとんかつ屋のご飯うまいとか、旅行で行ったところのご飯がうまかったとかだったんだろうと思います。人間不思議なもので一度、うまいご飯は旨いのだということを理解すると、もうね戻れない。自分でもうまい米を意識してどうにかしたいと思うようなるものです。

自分でどうにか、といっても羽釜も藁も竃もないわけですので、そこにあるのはどこかの炊飯器です。ふつうの炊飯器です。ふつうに炊けて保温もできます。でも一人分だけを炊いたり、保温にしておいても食べきれないので、あまり使わなくなりました。

そして、サトウのごはん時代へ移行します。一人分だし簡単だし、結構うまいです。が、楽なのはいいのですが、やはりコストが馬鹿にできません。ドンキなんかでまとめて買ったりしてましたがストック切れて今日はご飯なし、というようなこともあり、なにより、いつまでそれではどうも気分が悪いので、やはり自前で炊いたほうがいいのかなと思っていたころ、丁度というかなぜか某フェリシモで電子レンジ用の一人用土鍋というのをもらいまして、ためしました。意外とちゃんと炊けました。ふつうにおいしいのですが、炊飯器やサトウのごはんとそんなに変わるほどではありませんでした。

次は鍋とガスコンロで炊くことにしました。鍋のメーカーは忘れてしまったのですが、密閉性の高いステンレスの鍋が家にありました。鍋で米を炊くのは別に変わったことではないですが、この鍋、ウォーターシール効果(たぶん)があるとかで蓋と鍋が水でぴったりくっついて内圧が上がり煮物などもおいしくできるという謳い文句でした。ついでに米もうまく炊けるというわけです。小型の鍋だったので1合だけ炊いても丁度よい大きさで、炊いたその場で全部食べてしまえるのがよかったです。炊くのは簡単、研いだ米と水を入れて蓋をします。この頃は洗米も含めてブリタの水使っていました。そして、コンロ強火でふたがシール効果の限界にきたらカタカタいうのでそこまで加熱します。カタカタしたら、弱火にして約10分沸騰状態を維持します。最後に強火で締めて、あとは15分間蒸らします。で、蓋を開けてさくさくとほぐします。炊きたてごはんの香りはよいものだと実感できるひと時です。
これで炊いた飯はなかなかうまくいきました。炊いた米には粘りと艶があり、米の甘味もでています。米だけでしっかり味がしてうまいです。
余談ですが、この炊きたてご飯に北海道へ行ったときに買ってきたいくら醤油漬けと塩水うにを乗せた海鮮二色丼をやったらものすごくうまかったです。これは正直贅沢すぎるのですが、ほんとうまかったです。

ただ、小さいステンレス鍋なので保温性が低く、蒸らしの15分の間にご飯がどうしてもぬるくなってしまうのが欠点というか、気になっていたところです。釜返りまでは行かないですが、熱々のご飯というわけにはいきませんでした。また、毎回1合炊きだとやっぱりもったいないので、2合で炊いたりもしましたが、一度では食べきれない量です。保存方法としては冷凍でもいいのですが、当時は小さい冷蔵庫のおまけみたいな冷凍庫しか使えなかったので、ここはひとつおひつを使ってみることにしました。

おひつはふつうに売っている小さいものは、だいたいが3合用です。しかし、3合だと使うには大きいので、もう少し小さいのはないものかと合羽橋に見に行ったら、一軒だけ2合用の白木のお櫃を売っている店がありました。買いました。

おひつには、ちょっとびっくりしました。おひつに入れておくと、もちろんご飯は冷めます。が、どういう現象なのかわからないのだけど、艶と柔らかさはそのまま。味も冷めた分甘味が増すような気がします。炊きたてご飯とは別物の違うおいしさのあるごはんになります。たまに冷やごはんのほうが好きという人がいて同意できなかったのですが、おひつの冷やごはんなら確かにそういう意見も納得です。
と、言いつつも炊いて移すのも手間かかりますし、結局一合炊きして食べきるほうが楽だし、家で食べるのも一食程度です。今、おひつのごはんが食べたい、というときくらいしか使わなくなりました。

そんなころ、今はなき鳥取三洋の名作 おどり炊き 炊飯器が評判になっていました。今の高級炊飯器路線の先駆けとも言える製品です。実際、これはよいものでした。これ以前の炊飯器だと失われるα化したなんとかを戻してつやつやしたお米に仕上がるというもので、鍋で炊いていたものに比べると少しだけ香りがないのですが、おいしく炊けました。もうこれでいいじゃんと思いました。実際、一度壊れたので、また同系列の機種を買いなおしたほどです。三洋はPanasonicに吸収されてしまいましたが、おどり炊きは引き継がれていて最新機種ではWおどり炊きというもっとすごいことになっているみたいです。どこかで試食できないものでしょうか?一度試してみたいです。

しばらくはおどり炊きで満足でした。タイマーも保温もあるしおいしいので特に文句もなく過ごしていたのですが、離乳食のお粥を作るのにルクルーゼの鍋でお粥をつくると最高、という話が出て、それなら丁度お祝いでもらった小さいルクルーゼの鍋があるのでそれで、というので作っていたお粥を食べたら、これがちょっと異様なくらいうまい。すごい米の甘味がでていてなんだか贅沢な気分になる味です。さすがルクルーゼなのかどうか、これでふつうの米を炊くとうまそうなどと思っていたところ、見つけたのが「かまどさん」の評判です。土鍋です。評判や解説を読むとかなり理想に近い。早速購入しました。実によいものでした。

 かまどさん

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かまどさんの一番のポイントは火加減調整がいらないということです。かまどさんの伊賀焼土鍋の謎のテクノロジーによって、たぶん中蓋と外蓋の穴の位置を直角にするとか土鍋の厚さとかそういうことだと思いますが、コンロにかけて13分、蒸らし10分で炊きあがります。火加減調整なしで、です。炊きあがって熱くなった重い上蓋をあけ、これまた熱い中蓋をあけると、もわっとお米の香りのする湯気が立ち上がります。

 重い蓋を開けると、中蓋があります

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 さらに中蓋をあけます。もわっと湯気が立ち上がります。

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米粒はつやつやして、ふんわり炊けています。分厚い鍋なので保温性もよく、蒸らし後もまだまだ熱いままです。

炊きあがったごはん

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ごはんのアップ

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最近は冷凍技術も発達しているので、食べきれなかったものは小分けにして瞬冷凍すれば結構な品質で保存できます。
こうして、かまどさんにたどり着き、おいしいご飯、お弁当が食べられる毎日に感謝して生きております。

実は、もう一つ買ってよかった鍋があります。岩鋳 南部鉄器 揚鍋です。今調べたら、なぜかメーカーのホームページにはなくて楽天などの通販サイトでしか見つからないのですが、揚げ物はすごくカラッとあがります。カキフライやアジフライは衣サクサク中身はジューシーに本当になるので、こちらもお勧めです。